菌類・植物と生態系の進化

読み通すのに、とっても骨が折れる著書。
菌、細菌、キノコ、植物などの名前が延々と続く。素人だからほとんどわからない。
わからないけど文字を追っていると眠くなる・・・
そんなことのくり返しだった。
でも、最後の章でやおら目が覚める。


「迫りくる大絶滅」。


「生物進化の跡をたどってみると、全能の神を持ち出すまでもなく、まるで誰かが地球を使って壮大な実験を試みているように見える。陸上に暮らす生物の多くは、その進化の頂点に達し、ほかの生物に頼る共栄の時代に入っている。その高度に発達してもろくなった生態系を、脳が肥大化、言いかえれば巨大化した、たった一つの種にすぎないヒトが撹乱し、破壊しようとしているのである。」


それまでの300ページ近くは、地球の生物の進化が記されているのだが、それは、菌類の進化を不可欠のものとして織り込んだ、生態系全体の進化なのだと。そう、著者は強調する。


「直接、間接を問わず、多くの異種生物がかかわっている植物体は、本来多重共生体だと言えるだろう。この多重共生体が集って群落を作ると、さらに相互のつながりが多様化して、一つの生物体のようにまとまりのある生態系ができあがる。おそらく、このような多重共生が成り立つようになったのも、被子植物が現れてからのことだったと思われる。」


大きく言って、「三段跳びの進化を遂げた」生態系は、今その最高の段階に達している。


そして、
「ここ数千年の間にヒトが異常に繁殖し、地球生態系が大きく狂い始めた。」のだ。
つまり、生態系の進化の結果として、ヒトが異常繁殖した。
「進化論」の捉え方の問題だが、ヒトだけが、進化を続けて最高の段階に達した「すぐれた」生きものという理解は、間違っているということ。すべてのものが連関して進化して、生態系として現在に至っている。
こう書くと、そんなの当たり前、何を今ごろ・・と言われるだろうが、これはほんとうに世の中の常識となっているだろうか。
われわれはほんとうに、生態系の一員という自覚を、つねに持ち続けているだろうか。


キノコといえば、瀬戸内のある島で椎茸の工場栽培を見学させていただいたことがある。
その時にもった違和感は、この著書を読んでよけいに強くなった。


松茸から冬虫夏草まで、実にたくさんのキノコ・菌類が登場する。
キノコ好きの方には最高の著作。