「日本文化の多様性・・稲作以前を再考する」

日本文化の多様性

日本文化の多様性

・・・「稲作文化という単一の文化類型を日本文化にあてはめることによって、日本文化に画一的な特色を付与し、後には稲作と天皇制との結びつきを強調するところから、わが国を『天皇が統治する豊かな稲作国家』だとするイデオロギーを生み出すことにもなったと考えられます。」(はじめに)
関東平野の農業や生産の特徴に突き当たっていて、この著書に出会った。いきなり「天皇イデオロギー」批判が出てきて、そんなツモリで取り付いたのではなかったので驚いたが、同時にコレダ!!って感じるところがあった。
最新のDNA鑑定による植物遺物の検証を交え、生産様式の歴史的多様性をもとにした日本文化の多様性が語られている。アイヌ琉球、東日本、西日本。特にアイヌの問題には丁寧に触れられていて、鉄製の農具を使って立派な農業を営んでいたアイヌは、日本列島の「北の文化」を代表するものだったと指摘している。日本社会の現在の「包摂力」の貧しさを歴史的に批判し捕らえ返すことができる。行き詰った今の世の中を考え直す重要なポイントだと思う。
 この著書が今出されたことの意図も、そのあたりにあることは「あとがき」にしっかりと指摘されている。

とても説得力があって、いい著書だ。