万延元年のフットボール

万延元年のフットボール

万延元年のフットボール

著者は高校の先輩だ。この夏帰省して、実家の本棚から見つけた。高校生のころ読んだはずだが印象薄く、読み返して、こんなにインパクトがあるとは。
愛媛の山村を舞台とする物語は、何か肌の感触が合い、自分の生い立ちそして思考のルーツを見る思いで読み進んだ。
特におとうとの「鷹四」には何か他人事でないものを。
明治維新から大戦敗戦後今に至るまでの時と人の流れが迫ってくる。決してきれいな物語ではないが。
丸谷才一井上ひさしのお別れの会で、故人はプロレタリア派の後継、新興芸術派の後継は村上春樹、そして私小説派の後継が大江健三郎、と言ったそうだ。あとの二人はともかくとして大江は私小説派なのか?「フットボール」がそうだとは、僕には言えない。
だがしかし、読んだ僕の共感のありようは、まさに私小説的なそれだったことは間違いない。