寺山修司の俳句入門

寺山修司の俳句入門 (光文社文庫)

寺山修司の俳句入門 (光文社文庫)

この人が俳句入門なんか書くわけがないと思ったら、案の定、別に入門書ではない。編集者が勝手にこんな本を作ったのだ。
でも、面白い。
青森の高校生だったころから中央の俳句誌に入選を繰り返し全国に名を売った寺山。二十歳ころに俳句は「卒業」したらしいが、ごく短い間にすごいのをいっぱいつくっている。天才です。
この「入門」には、当時の寺山の短い評論がたくさん載っている。やっぱりすごいのは、僕の言葉で言えば「分岐している」ということ。表面的に見れば、誰彼なく斬りまくっているようにも読める。でも、まず「分岐する」ということが極めて大切で、それなくしては前進はないことを、まさに天才として本能的に獲得していることを痛感させられた。「分岐」ののち「統一」、このようにしてしか物事は進まないのだ。なにせ自分を入選させた俳壇の評者つまり権威を斬りまくっているから、それは大したもの。
そして、「入門」といえるのは「飛躍」ということを明確に教えてくれているという点では僕にとってそうかもしれない。定型のそしてルールをもったものに取り組むことによって日常からの「飛躍」を得ること。これは天才から凡人まですべからく共通することだと思う。どんなに小さくても「飛躍」によって変化はもたらされる。それは、僕にとってもそう。

とてつもなく大きな現実にぶつかって砕け散った人だと思う。天才はみんなそういう生き方を余儀なくされるのではないか。
凡人は、さてどうやって生きるのか。