人と森の物語

人と森の物語 ―日本人と都市林 (集英社新書)

人と森の物語 ―日本人と都市林 (集英社新書)

 暑いですね。
 森の話は少し涼しさを感じるかな。
 「日本人と都市林」という副題のついたこの著書。
 ドイツ文学者がどうしてこんなに森のことに詳しいの?とびっくりさせられる。
 そして「都市林」という言葉も僕は初めてだった。
 冒頭に「都市の近くにあって、都市生活者に欠かせない森」と著者は定義する。これはこの間広がっている「雑木林」論を含みつつ、もう少し広く現在の森の存在について考える著作だ。
 北海道から沖縄まで15の森が取り上げられ、その歴史、先人達の熱意と努力が今を生きる私達にどのような恵みを残したかが語られる。僕の故郷愛媛では新居浜別子銅山あとの「銅の山」。宮崎の「綾の森」のモコモコ感はこれを感じたことのある人なら誰も、そうそう!と共感する姿を題材に、照葉樹林帯の姿、文化にも触れられている。西日本のちょっとした山奥にはモコモコの山が残っている。春から夏にはとっても生命力を感じる山の風景。
 選挙でずいぶん各地を歩いた。いろんな山を見たはずだが・・長崎の高速道路脇に続く照葉樹林はまさにモコモコだったな、とか、五島のツバキの原生林も相当モコモコで、モジャモジャだったなとか。比叡山系の北の方の杉林の寒々とした様子とか・・思い出せる印象は多くない。ゆっくり歩く暇など無く過ごしてきたことを残念に振り返る。気仙は訪れたばかりだが、山を見つめる余裕はなかった。
 先人達が謙虚な熱意で自然に学びながら、土地に合わせて作り上げてきた多様な森のありよう。未来へつなげたい。