おもしろい

日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)

日本の歴史をよみなおす (全) (ちくま学芸文庫)

僕自身がこれまで歩いてきたあちらこちらの漁村、農村、小さな町・・思い起こしながら読み終えた。
歴史って、どうしても受験勉強の枠から抜けられず、時代区分、そのメルクマール、学説の仕分け等となる。そんなところから脱出するにはとてもいい著書。
稲作の伝播、土地(農地)に対する支配・所有・分配の変化を基準に時間を輪切りにする歴史観を著者は「農本主義」と批判する。「百姓」は「農民」ではない。その実に多様なあり方を実証し、縦に並べて見せる。
日本海民史」というジャンルがあるのだ。
そして何と「悪党」が登場。「第四章 悪党・海賊と商人・金融業者」とちゃんと「章」が建てられていて、位置づけがなされている。
僕が「悪党」って勝手に自称していたのでちょっとうれしかった。だが網野さんのはちゃんとした歴史的位置づけである。こうなれば僕自身も現代の「悪党」についての社会的基礎を明確にせねばなるまい。いずれ、ね。
だが、「尾張、美濃の悪党たちが、一遍上人の布教にもし妨げをする者があったら、きびしく処罰をするという高札を立て、その結果、三年の間、一遍たちはこの地域での布教を、山賊や海賊による妨げを受けることなく、平穏にすることができた・・」「交通路の安全や手形の流通を保証する商人や金融業者のネットワークは、十三世紀後半から十四世紀にかけて、悪党・海賊によって保証されていたと考えられます。」とあり、その後の階級攻防と合わせて今に至る過程はなるほどと考えさせられる。
やっぱり日本には「悪党」の復権、いや、「現代の悪党」が必要だ、なんてね。
ちょうど、「現代思想」臨時増刊で「宮本常一総特集」が出されている。こちらへと読み進む。

きわめて感慨深い。