アテルイ伝
- 作者: 高橋克彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2002/10/16
- メディア: 文庫
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一方、武蔵野公会堂では10月5日、学習院大学の赤坂憲雄教授の講演会が開かれる。演題は「国木田独歩の『武蔵野』を読む」だが、このかたは地域学とくに東北学の第一人者だ。昨年春まで東北芸術工科大学におられ、研究誌「東北学」を創刊された。(吉祥寺コピスのジュンク堂にあるよ!)
3.11からの復興とは、三陸の海岸を巨大堤防で台無しにすることではない。
東北の本当の値打ちをただしく評価することだ。その歴史も、もちろん。
「火怨」はアテルイ(阿弖流為)の闘いの記録。もちろんフィクションだが、歴史の欠けた、いや消されたところを補う作業として貴重な著作だ。
吉祥寺の武蔵野八幡は坂之上田村麻呂ゆかりの神社と聞いた。過去の英雄の名前を借りたのかもしれないが、その英雄と死闘を繰り広げたのがアテルイである。みちのくの地で敗北した側の記録は、この国の正史には留められていない。蝦夷は人ではないとされた当時の社会のなかで、ただ一人対等な相対をしたのが坂之上田村麻呂だと、著者は展開している。
アテルイを中心としたみちのくの蝦夷の人びとの闘いに、終わりの60ページくらいは涙なくして読めない。
僕たちは「武蔵野学」と言っているが、自らの地の風土記を尊重することは、同時に他の地のそれぞれの風土記を尊重することでもある。
それは、東京から指図する復興ではなくて、東北自らの復興を実現することにも通じる。
3.11を出発点として、そんな日本をつくりたい。