農業に正義あり

農業に正義あり―田地一町畑五反貸さず売らず代を渡せ

農業に正義あり―田地一町畑五反貸さず売らず代を渡せ

ごつごつした書きっぷりで、最初は読みにくい。
著者の性格が伝わる。
特に前半の、明治政府による全国的で大規模な入会地収奪の経緯を延々と示すあたりは、
つい飛ばして進みたくなってしまう。
だが、その問題が大きな意味を持つことはその後説得力をもって展開される。

里地・里山というけれど、それはどこに存在するのか。確かに僕の田舎でも、共有の入会地は存在しない(僕の知る限りでは)。それは、無くなったのではなくて、収奪されたのだということ。
その後の農業は、入会地無しでの経営へと変化し、必然的に化学肥料への全面依存の道をたどる。戦争と重工業化が国家の柱となる時期。

その転換点の前、つまり幕末から明治初年には、日本の農業はアメリカやヨーロッパを圧倒的に凌ぐ生産力を持っていたという事実が示される。農薬にも化学肥料にも頼らず。

宮本常一が示した「百姓」の考え方。漁をし、畑を耕し、交易に携わり、時には海賊になり・・・そんなことも思い浮かべながら・・、それは随分前の時代のことだが、江戸期を通じて発展した多角的・労働集約的農業の有効性を改めて学ぶ。

もちろん著者も、時代を戻せと主張するわけではない。
過去に学び、今後のあるべき日本農業の姿が提示される。とっても大変な道のりと思うが、この方向が、今のところ僕には一番いいと思える。現実は一歩一歩だけれど。指し示す道筋として。