山頭火
- 作者: 坪内稔典,東英幸
- 出版社/メーカー: 創風社出版
- 発売日: 2008/07/10
- メディア: 文庫
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山頭火の100句を50人の鑑賞者がそれぞれ2句ずつ評するという編集になっている。
評者のおよそ半分は名前(号)からして女性だろうか。どうやら、女性と男性でだいぶん評価が別れる。「女房子供を捨てて好き勝手に彷徨うだけでも嫌なのに、疲れた、とか言って別れた女房のところに舞い戻り、また去り、長男から結婚式に出てほしいと送ってきたお金まで飲んでしまう男なんて。何が『まっすぐな道でさみしい』だ!」(中原幸子)
男は対照的に・・「たとえば昭和11年4月の『層雲』15週年記念大会の写真。中央に山頭火が腰をおろし、その後ろに井泉水が立っており、二人の左右に『層雲』の仲間が並んでいる。その50数名がすべて男。男たちの宗教的、修養的な俳句ネットワーク、それが山頭火の放浪を可能にしたのだった。」(坪内稔典)と編者も認めているような熱の入れようだ。
このへんが、とても可笑しい。
それと、山頭火の句には、自身以外の人はほとんど出てこない。
日ざかりの千人針の一針づつ
みんな出て征く山の青さのいよいよ青く
銃後で詠んだ句が印象的だが、あとはいつも「ひとり」。
一人で歩く旅ではあったが、「行乞」での出会い、宿での出会いは毎日たくさんあるはずなのに、日記にはそんなこともたくさん書いてあるのに、句はいつも
何を求める風の中ゆく
かげもいっしょにあるく
と言った調子なのだ。
まったく不思議な人だ。
分け入っても分け入っても青い山
ひよいと四国へ晴れきつてゐる